共同生活援助(グループホーム)サービスは、利用者が事業所で常に過ごし、生活することから、ある程度の面積が必要になります。そのため必要資金が多くなる傾向にあります。
以下では、介護サービス包括型で、賃貸物件を利用する場合で、開業資金のシミュレーションを行います(地域差・条件面により大きく変わりますので、ご留意ください)。
イニシャルコスト(初期費用)
- 法人設立費用
新規で株式会社を設立する場合、最低「25万円」程度は必要になります。 - 物件の賃貸に必要な費用(賃料と敷金・保証金などの初期費用)
面積は、最低でも一部屋「7.43㎡以上」が必要です(指定権者によってもう少し面積が必要なところも)。
また、4部屋以上、キッチンや台所も必要なので、4LDKの一戸建てやマンションで考えると、都市圏や郊外などで大きく変わり建築年数にもよりますが、「20万円」までに抑えたいところです。
家賃分を利用者に家賃として負担してもらうとして、ここでは便宜的に「15万円」としておきます。
なお、生活介護サービスの場合と同様、ここでも「賃貸契約=業務スタート」ではありません。
自動火災報知機などの設置工事中でも家賃は発生します。従業員を早く集めて指定申請の手続きを行なわないと、どんどん空家賃がかさんでしまいます。
最短でも2か月間の空室が発生すると仮定して、イニシャルコスト「30万円」を加算します。また、1、2か月程度のフリーレントに応じてくれる家主もいるので交渉してみることをおすすめします。指定権者によっては、3か月以上の空家賃を見込む必要があります。
ここでは敷金、礼金それぞれ1か月分程度の「30万円」を加算しておきます(場所や条件により大きく変動します)。
さらに、不動産業者への手数料が、家賃のおおよそ1か月分として「15万円」を見込んでおきます。 - 内装や消防費用
物件が古い場合には、改装が必要ですし、古い物件にありがちな襖で区切られて居室2部屋となっている場合は、間に壁を挟み独立した1部屋にする必要がある指定権者もあります。
階段が急な場合は、手すりを設置する必要があるかもしれません。
また、自動火災報知機や誘導等の設置は必須です。上記施設の場合だと100万円程度は見込んでおく必要があります(物件によって設置の手配が必要となるため、あくまで概算です)。ここでは「100万円」を見込んでおきます。 - 電化製品や家具など
利用者の生活に必要な、共用部分に設置する冷蔵庫や洗濯機、電話機などの電気製品、コロナ、ダイニングなどの共用部分のテーブル、食器棚などの家具も必要となります。
また、パソコンやネットWi-Fiなどの環境整備も必要です(電話回線とネット回線の工事費に数万円程度は必要)。
さらに、各部屋に空調設備は極力備わっているものとして、ここではエアコン以外の電化製品などの購入代金として「75万円」を見込んでおきます。 - 備品
普段の生活に必要な共同の備品なども揃える必要があります。ポスト、傘立て、靴箱、風呂椅子、洗剤、カーテン(防炎のもの)、調理器具、掃除用具など「5万円」を見込んでおきます。 - 人件費
指定を受ける前に準備を行うことが多数あるため、管理者兼サービス管理責任者1名を指定前から雇い入れるため、「25万円」(社会保険料や交通通費込み)を見込んでおきましょう。指定日から雇い入れるという甘い考えは捨てましょう。求人でもなかなか人が来ない現状です。 - その他
上述以外にも、物件選びや家電選びのための交通費や、申請時に必要な書類集めの実費、求人広告の費用、損害賠償保険への加入代なども必要になります。ひとまず「10万円」程度を見込んでおきましょう。
以上を合計すると、イニシャルコスト(初期費用)は下表のようになります。
項目 | 費用 |
---|---|
法人設立費用 | 25万円(合同会社なら約6万円) |
家賃 | 30万円(2か月分) |
敷金、礼金、保証金 | 30万円 |
不動産業者に対する仲介手数料 | 15万円 |
内装、消防費用 | 100万円 |
電化製品や家具(回線工事費を含む) | 75万円 |
備品 | 5万円 |
人件費 | 25万円 |
その他 | 10万円 |
合計 | 315万円 |
ポイント
共同生活援助サービスの場合、生活施設という点から、生活の動線がよい物件が好ましいといえます。あまりにも古い物件だと利用希望者から敬遠される場合があります。
利用者の買い物等交通の利便性を考えた時、スーパーやコンビニが近くにある立地がよいと言えます。また、静かな環境という点で考えると郊外という選択肢も出てきます。事業運営を考えるうえで、何に重点を置くかが大切です。
物件にかかる費用は、立地・築年数・面積・間取り等で大きく変動するので、ご自身の資金力や融資の目途をが含めて判断することが必要です。家賃が高いと、利用者にその負担がのしかかるので、考慮して物件選びを行ってください。
ランニングコスト
上記のイニシャルコストに続いて、3か月分のランニングコストもシミュレーションしていきます。開業後、3か月間の事業所収入がなくても資金ショートしないことが大切になってきます。
[モデルケース]
定員4名のグループホーム。管理者兼サービス管理責任者1名、生活支援員や世話人などの従業員合計3名(常勤)でスタート。
- 家賃(3か月間、利用者がいない場合を想定)
15万円/月 × 3か月 = 「45万円」 - 人件費
管理者兼サービス管理責任者1名
25万円/月(社会保険料や交通費等込み) × 3か月 = 75万円 - 光熱費等(3か月間、利用者がいない場合を想定)
1万円/月×3か月=「3万円」 - 営業代・雑費
利用者獲得のための交通費等やホームページ作成代などが必要になります。運営していくうちに必要なものの購入代も発生します。事業所によって大きく変わりますが、月に2万円程度を見込んでおきましょう。
2万円/月×3か月=「6万円」
以下が共同生活援助サービスに要する3ヶ月分の運営コストになります。
項目 | 費用 |
---|---|
家賃 | 45万円 |
人件費 | 300万円 |
光熱費等 | 3万円 |
営業費、雑費 | 6万円 |
合計 | 354万円 |
まとめ
上記シミュレーションの結果、イニシャルコスト315万円と3か月のランニングコスト354万円を合計した開業資金は「669万円」になります。
利用者がゼロでも「人員配置基準」を守る必要があるため、最低限は3か月間、利用者がいなくても資金ショートしない予算組みが必要になります。しっかりと計画を立てておくことが大切なのです。
また、グループホームのサービスには「送迎加算」がないので、シミュレーションでは「自動車に関する費用」は含まれていません。
グループホームでは、車を利用するケースがかなり多く、その場合は、駐車場付きの物件か駐車場を近くで借りる必要があります。ガソリン代も必要になるので、ランニングコストはその分上昇します。
ただし、順調に利用者の入居があれば、家賃や光熱費等は利用者から回収できるので、他のサービスよりも出費は少なくてすみます(人件費は他のサービスより余計にかかる傾向にはありますが)。
これらを含め考慮すると、開業資金(賃貸物件・内装なしの場合)として、「800万円」以上の準備を推奨しています。
[共同生活援助(グループホーム)利用者の家賃助成]
共同生活援助サービスの利用者(生活保護または低所得の世帯)が負担する家賃を対象として、利用者1人当たり月額1万円を上限に補足給付(特定障害者特別給付)が行われます。
給付額:家賃が1万円未満の場合=実費
家賃が1万円以上の場合=1万円
ただし、この家賃助成は、光熱費、日用品費、そのほかの日常生活費など家賃以外の費用については、対象とならないので注意してください。
また、これにプラスしてさらに家賃助成を行っている自治体もあるので、指定権者などに確認してください。