就労移行支援体制について

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就労移行支援体制加算の取得条件と注意点

 就労継続支援A型・B型事業所が「就労移行支援体制加算」を取得するためには、利用者が企業等との雇用契約に基づき就労し、その後6ヶ月以上継続していることが求められます。この「就労」には、アルバイトやパートタイムなど、労働条件を問わず広く含まれます。ただし、他の就労継続支援事業所の利用者としての就労や、個人事業主としての独立は対象外となります。

 加算の取得には、前年度において6ヶ月以上の雇用継続実績が必要です。この6ヶ月のカウントは、前前年度の11月1日から前年度の10月1日までに就労を開始した場合に適用されます。一度就労し、その後1ヶ月以内に再就職した場合も、初回の就職時から継続期間を計算できます。

 加算額は、事業所の人員配置やスコアに応じて異なります。例えば、就労継続支援A型の定員20名、7.5:1の人員配置で、前年度に3人の就労継続者がいた場合、1ヶ月あたり約72万円の加算収益が見込まれます。

 しかし、加算額が大きいため、実地指導の際に指摘を受け、報酬の返還を求められるリスクもあります。特に、加算の要件や届出にミスがあるとトラブルの原因となります。例えば、自社の就労継続支援事業所に利用者を就職させても、加算の対象とならない場合が多いです。また、利用者が他社の就労継続支援事業所を利用しながら他社に就職した場合も、基本的には加算の対象外となります。

 「就労移行支援体制加算」を適切に取得するためには、要件を正確に理解し、必要な書類を整備することが重要です。また、利用者の就労状況を正確に把握し、適切な支援を提供することで、加算の取得と事業所の収益向上を図ることができます。

就労移行支援体制加算の適用時の注意点

 就労移行支援体制加算を適用する際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。適用条件を満たしていない場合、不正受給と判断される可能性があるため、慎重な対応が求められます。

1. 就労の継続確認と報告

 加算を受けるためには、対象となる利用者が6ヶ月以上の雇用を継続していることを証明しなければなりません。雇用契約書、給与明細、勤務実績の記録などを適切に保管し、必要に応じて自治体へ報告できるように準備しておきましょう。

 また、利用者が就職後に退職や転職をした場合、その情報を正確に把握し、報告書の作成時に反映させることが重要です。自治体によっては定期的な実績報告を求められる場合があるため、適切な管理体制を整えておく必要があります。

2. 加算対象外となるケース

 以下のようなケースでは、加算対象とならないため、注意が必要です。

  • 同一法人内の別事業所での雇用:例えば、就労継続支援A型事業所を運営している法人が、同じ法人内の別の事業所で利用者を雇用した場合、加算の対象外となることがあります。
  • 他の福祉事業所での利用者としての雇用:利用者が他の福祉施設に「利用者」として通いながら働く形態では、一般就労とみなされず、加算の適用外となる可能性があります。
  • 短期間での退職や雇用契約の未更新:6ヶ月未満で退職した場合や、雇用契約が試用期間のみで終了した場合は、要件を満たさないため、加算の対象にはなりません。

3. 実地指導への対応

 就労移行支援体制加算を取得している事業所は、自治体による実地指導の対象となる可能性が高くなります。指導の際には、加算の要件を満たしていることを証明するために、以下のような資料を整備しておくことが重要です。

  • 就職者リスト(雇用開始日・勤務先情報・雇用形態などを記載)
  • 雇用契約書の写し
  • 給与明細や勤務実績の証明書
  • 6ヶ月以上の継続雇用を証明できる資料
  • 定期的なフォローアップ記録(就労後の状況確認や支援の内容)

 指導時に書類が不足していると、加算の不正受給を疑われ、最悪の場合、報酬の返還命令が下る可能性もあります。日頃から適切な記録管理を行い、指導に備えることが大切です。

就労移行支援体制加算の活用方法

 就労移行支援体制加算を適正に取得することは、事業所の安定した運営につながります。加算を活用することで、事業所の収益を増やし、より質の高い支援を提供することが可能になります。

1. 就職支援プログラムの充実

 加算を活用し、就職支援プログラムの内容を充実させることができます。例えば、以下のような取り組みを強化することで、利用者の就職率向上につながります。

  • 企業実習の機会を増やす
  • 就職後の定着支援を手厚くする
  • ビジネスマナー講座や履歴書作成支援の提供
  • 企業との連携を強化し、就職先を確保する

2. スタッフの研修や増員

 加算による収益増加を活かして、スタッフのスキルアップや増員を図ることも重要です。特に、就労支援の専門知識を持った職員を増やすことで、利用者へのサポートの質が向上し、事業所の評価向上にもつながります。

3. 利用者募集の強化

 就労移行支援体制加算の取得には、実際に就職する利用者を増やすことが必要不可欠です。そのため、以下のような方法で利用者募集を強化することが有効です。

  • ホームページやSNSを活用した情報発信
  • 地域のハローワークや支援機関との連携強化
  • 説明会や見学会の開催
  • 企業や関係機関への広報活動

まとめ

 就労移行支援体制加算は、就労継続支援A型・B型事業所にとって重要な加算制度ですが、適用には慎重な対応が必要です。加算の要件を正確に理解し、適切な支援を提供することで、事業所の経営基盤を強化できます。

 また、実地指導に備えて、必要な書類を整備し、利用者の就職実績を適切に管理することが求められます。加算を活用しながら、より多くの利用者が安定した就労につながるよう、事業所全体で支援体制を強化していきましょう。

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