B型事業所で働く41歳の知的障害者の息子が時給160円で働いており、母の日に感動的な手紙をもらったというポストが話題になりました。しかし、このポストには「日給160円は不当ではないか」という意見が多く寄せられました。今回は、行政書士目線で解説いたします。
B型の現状
B型事業所利用者の工賃(いわゆるお給料)は、安い場合で月給3000円程度で、高い場合は20万円近くまでの振り幅があります。厚生労働省が発表した令和4年度の平均月給は17,301円でした。22日間働いたとして日給にすると、約780円となります。
不当か否か
平均日給780円とポストにあった160円を比べると、確かに不当な金額に感じる方は大勢いらっしゃると思います。ましてや普通に会社勤めをされている方からすれば、「時給よりも少ないじゃん!」と考えたとでしょう。しかし、就労継続支援B型では
「利用者それぞれに対し支払われる一月当たりの工賃の平均額は、三千円を下回ってはならない。」とあります。つまり、160円で22日間と換算すれば3,200円を超えるので不当とは言えないという結論に至ります。
なぜB型事業所は工賃が低くなるのか
A型とB型が大きく違うのは、やはり雇用の点です。A型は雇用契約を結んでいるため、人数が安定しており、大きな仕事を受けても納品が可能です。例えば、A型では10人登録していると、毎日約8人は出勤します。出勤率が高いのです。一方、B型は50%ほどの出勤率で、20名登録していても毎日10名ほどしか来ません。誰が来るかも不確定です。このため、B型では量をこなすのが難しく、高単価の仕事を取るのが困難です。納期が緩い、単価が安い仕事を取るしかない状況になります。
さらにA型の利用者とB型の利用者を比較すると、B型の出勤率が低い理由は、雇用契約がないからです。A型では週5日、4時間以上働けるかが条件となります。もちろん、週3日からでもOKですが、安定した出勤が求められます。一方、B型は登録制なので、辛いときは休むことができます。また、B型は他のB型とも併用でき、スキルを身につける訓練のようなものも提供されているところも多いです。そのため、出勤率が低くなりがちです。
この制度の違いが工賃の差に繋がっている状況です。
それでもB型を利用する理由
A型とB型の違いとして、A型はしっかり働く感じですが、B型は勉強の時間が多いというケースもあります。A型はがっつり出勤し、B型は自分のペースで出勤するため、出勤率に差が出ます。A型は雇用契約を結んでいるため、出勤が厳格で安定しているのに対し、B型は自由度が高いです。経営者から見ると、A型のスタッフは社員として扱い、B型の利用者は登録制なので、出勤に強制力がありません。例えば、B型の利用者は行かなくても良い日ができてしまうことがあります。これがB型の利点でもあり、特に体調が悪い人やA型の厳しさに耐えられない人にとってはB型の方が適しています。A型の方が賃金が高いですが、何を優先するかでB型を利用する人が多いです。
また、体調が悪くて働けない場合、生活保護というセーフティネットという考えもあります。親元に帰るという選択肢もありますが、関係が良好でない場合は無理して働くのも難しいです。各個人の事情に応じて最優先事項を考え、生活保護を利用するのも悪いことではありません。生活保護は一種のベーシックインカムと考え、体調を整えながらB型に通い、最終的にA型や就職を目指すという道もあります。
以上のことからB型を利用する方は今後も増えていくと見ています。